全景写真を撮り忘れたので、公式ホームページからの引用です。
出展:みんなの森 ぎふメディアコスモス – ´Minna no Mori’ Gifu Media Cosmos (g-mediacosmos.jp)
建物概要
名称 :みんなの森 ぎふメディアコスモス
所在 :岐阜県岐阜市司町40番地5
用途 :公益複合施設(図書館など)
竣工 :2015年2月12日
(開館:2015年7月18日)
設計者:伊藤豊雄 建築設計事務所
延べ床:15,295.04㎡
階数 :地上2階、地下1階
北に長良川、西に金華山を臨む自然豊かな立地、かつ岐阜市街に位置するぎふメディアコスモスを見学しました。
交通アクセスは「JR岐阜駅」「名鉄岐阜駅」からバスで10分から15分ほど。
建物構成
1F エントランス、市民交流スペース、ギャラリー
2F 岐阜市立図書館
設計者は伊藤豊雄さんということで、”信毎メディアガーデン”と似た要素も見られました。
2階の波打つ木造屋根の大空間が魅力ですが、さっそく2階から見学。
木製の格子状に組まれた屋根が特徴的です。木製格子自体が構造材で、これだけ大きな空間なのに梁が全くありません。梁がないので目線が分断されず、部屋の奥まで続く屋根の曲線が見られます。
柱も細く極力目立たせず、空間の広がりを遮らない工夫でしょうか。
近づいてみると樹木の表皮のような塗装がなされていました。
誰がこんなところに気付くのかという部分にまでこだわる。設計者の細部までの気遣いを感じます。
グローブ
もうひとつ、特徴的なのがグローブと呼ばれる白い”かさ”です。
グローブの中から上をのぞき込むと、換気と光取り込み用の窓があります。窓から取り込んだ光をグローブが周囲へ拡散させて室内の明るさを確保しています。外壁面がガラス張りという点もありますが、グローブのおかげで天井照明も比較的少なめです。
昔の図書館みたいに蛍光灯が、ずらりと並んだ空間とは違います。
上の写真からもわかりますが、手元照明は多めです。
全般照明はやわらかめの光で落ち着いた空間を演出し、手元照明で本を手に取って選んだり、読んだりするためだと思います。
広い空間の真ん中に、ぽつんと樹脂製のブロック。
近づいてみるとブロック周囲の床には館内の案内表示。ブロックは館内マップとなっていました。
館内マップをよく見みると、各グローブに絵柄が表示されています。
周囲のグローブを見回して驚きました。グローブに館内マップと対応したグラフィックパターンが。グローブはサインの役割も担っていました。1人何役してるんだ。
小室哲哉さんも驚いてるに違いない。
防火区画
“梁がない”と前述しましたが、防火シャッターはあります。
耐火建築物の場合、1500㎡以内ごとに防火シャッターや壁で区画する必要がありますが、ここにも工夫がありました。
目線を通すためにシャッターは部屋の端っこだけで限定的となっています。
これでは区画になっていないのでは?と疑問に思いましたが、シャッターの続きを見て納得しました。
格子屋根の隙間に白い”ちょぼちょぼ”があります。(水色の矢印をした部分)
ウォータースクリーン設備というもので、防火シャッターは火災時にシャッターを閉じますが、ウォータースクリーンは名前の通り、水幕により火災の拡大を防止します。
防火区画について、最も疑問に思ったのはシャッターと屋根の間の隙間です。(水色で囲った部分)
火災時はシャッターを閉じて区画を形成しますが、上部は開いていても問題ないのでしょうか。この部分の法的な解釈がわからず、どなたかご教示頂けたらと思います。
そもそも、シャッターを使わず全てをウォータースクリーンとした方が空間的にはよかったのでは?こちらについてもご意見頂ければ幸いです。
↓参考までにホーチキ株式会社さんのウォータスクリーンのカタログURLです。
ウォータースクリーン設備
その他の設備
天井に設置されている照明器具やシャッターには電源を送る必要があります。
通常の建物では、EPSやPSなどの専用室を通って天井まで配管・配線をします。
“ぎふメディアコスモス”では、木屋根の下は柱とグローブのみで天井まで区画されたEPSやPSは見当たりませんでした。
EPSやPSの代わりに目隠しフェンスに囲まれたエリアがありました。この中を配管配線が立ち上がっています。堂々と立ち上がっている割には、意外と目立たないという印象でした。
屋内消火栓です。消防隊が利用するものではなく、一般の方が初期消火に利用する設備です。通常は壁面に設置されますが、壁が少ない建物なので自立型。
ですが配管は見当たりません。
中を覗くと配管は床から直接、消火栓箱の中へと入っていました。
スタンド照明も床から”にょき”。コンセント差し込みタイプではなく、直接電源送り。
本の蔵
“本の蔵”と名付けられた1階の開架書架へ。本の蔵は周囲がガラス張りでエントランスからも様子が見られる配置。
本の保存には、紙が劣化しないように適度な温湿度制御が必要となります。高湿度ではカビの発生、低湿度では収縮、ひび割れなどが発生します。また、急激な温湿度環境の変化も紙の劣化につながります。メディアコスモスでは屋外の温湿度変化の影響を受けにくいように、建物の中心に”本の蔵”が配置されていました。
エントランスとの境界は床までガラス。
上部もコンクリートの垂れ壁までガラス。サッシについて詳しくありませんが、通常はコンクリートの打設後に枠をはめ込むかと思います。枠がないので、コンクリート打設前にガラスがセットされていたのでしょうか。
上部の丸い穴が空調の吹き出し口、下部が吸い込み口。
天井には空気循環用のサーキュレーター。
本の保存には適度な温湿度制御が必要と前述しましたが、空気の循環も重要です。空気が滞留して空調が行き届かないと意味がありません。
天井を走る消火配管。
書庫の場合、誤発報時に水損被害とならないようにガス消火が一般的です。しかしガス放出中の表示灯が見当たらず、主管も太くスプリンクラー設備のように思いました。
ルーバー吊り天井
1階はルーバーの吊り天井。
木ルーバーの裏には吸音材が貼り付けられており、音の反響を抑制しています。
木ルーバーの上部は空調ダクトや空調配管、スプリンクラー、電気ケーブルなど、ぎっしりですが、きれいに配管されていました。
サイン
グローブもサインの役割をしていましたが、メディアコスモスでは”みんなの森フォント”というオリジナルフォントで統一されています。
木天井の為、本棚はプレキャストコンクリート製で不燃化。
階段。
エレベーター。
時計も”みんなの森フォント”。
ここは普通フォント。
ローソンはいつもの”LAWSONフォント”。
伝統的フォントは覆せない。
写真右手の小部屋は1階のエントランスに面しているので、目立つように大きなサイン。
ネオン管のような館名板。
外構他
建物を出る頃には時間も遅く、あまり外観写真は撮れませんでした。
最後に写真を何枚か貼って終わりにしたいと思います。
外から見ても存在感を放つグローブ。
建物西の通路。
通路照明はスポットライトで天井を照らして間接光で明るさを確保。等間隔に伸びる光の帯がきれいです。
スポットライトは渡り廊下の柱に直接取り付けるスタイル。
写真が見にくい…。もっときれいに撮れるようにカメラが欲しいです。
みなさんもぜひ訪れてみてください。それでは。。
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